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01.02
Sat
あらすじ
河内の国、高安の人、左衛門尉道俊は人の讒言を信じ我が子俊徳丸を追い出します。
さすがに不憫に思った道俊は、俊徳の後世の往生を願って、天王寺で七日間の施行を行います。(施行は己の来世のために貧者や僧に施しをして善根を積むこと)
父に追い出された俊徳は悲しみのあまり盲目となり、人々に弱法師と呼ばれ、闇を彷徨い仏の慈悲にすがる身の上となり、父道俊の施行の場、天王寺にやってきます。
道俊は俊徳が我が子であることも気づかず施行を受けるよう促します。俊徳は袖を広げ、折から散りくる梅の花と共に施行を受けます。
施行を受けた俊徳は施主に聞かせるかのように、天王寺の縁起や仏徳を作った曲舞を謡います。
やがて日も傾き、没する日を拝み西方浄土を想念する日想観の時刻になります。
西の方角には俊徳が嘗て見た美景が広がっています。俊徳は西に向かいます。過去の景色が心の中に蘇ります。
俊徳の心は高揚し、過去の景色を想念し求め、南へ住吉の松原を、東に草香山、北に長柄の橋、と舞狂います。
父道俊は弱法師、俊徳が我が子であることに気づき名乗ります。俊徳は我が姿を恥じ、逃げようとします。父はその手を取り、共に高安の里に帰っていきます。

□観賞のために
人の五官のうち視力を失うことほど悲惨なことはないでしょう。この能の主人公、俊徳丸の身の上です。それも親に捨てられ悲しみの涙で盲いいたのです。
杖を突いて現れた、シテ俊徳は親に捨てられた我が身の境涯を、仲のいいオシドリやヒラメの例を引いて嘆き、これも前世の因縁として仏徳に縋るべく天王寺にむかいます。
能の盲目の杖の扱いは常とは異なり、握った杖を胸の辺りに固定して離さず手首で杖だけを動かし探ります。つえの先端で“心”の字を書くとされています。常とは全く異なる杖の扱いは、何事をも美化しよとする能の姿勢でしょう。脳裏に心字池があったのかも知れません。
シテはシテ柱を天王寺の鳥居に見立てて探りあて、盲目を強烈に印象づけ舞台に入ります。
仏教の寺に何故鳥居と不審する向きもあるでしょう。神道は日本の国教だったのです。寺には小さくとも必ず神社が祀られていました。
舞台は天王寺境内。シテはワキ通俊の施行を受けます。梅の香が聞こえてきます。
視力を失った者の嗅覚が冴え、シテの僅かな面遣いは梅の香を見所に伝えます。
二人は“梅”談議をします。
仁徳天皇がこの地、難波津に皇居を定めたときの梅の歌や、和漢朗詠集の梅の歌を引き
難波津の花といえば梅をさすと。
二人の梅談議は、暗いシテの境涯を語ってきた舞に、ひとときの明るい春の風を呼びます。
 シテは舞台中央に進み座して杖を置きクセを語ります。クセはシテに代わって地謡が謡います。
クセは型式に沿ったものですが後半に、折しも聞こえる寺の鐘の音に万物成仏を感得するしみじみとした場面があり胸を打たれます。
 ワキが日想観の時だと告げます。シテは西に向かって入り日に手を合わせ、仏の慈悲を感得するかのように舞台を静に一巡するイロエを舞います。
シテは住吉の方向を眺めやります。盲目故に見える浄化された景色。淡路、絵島、須磨、明石。過去に見た景色が心眼に浮かびます。
「紀の海までも見えたり見えたり、満目青山な心にあり」「おう、見るぞとよ、見るぞとよ」と叫び。心は純化された景色の過去へ回帰し、憧れ、狂乱します。眼目の「狂い」です
折しも彼岸の中日、境内はごった返しです。人々に突き当たり転び杖を落とし、手探りで探すリアルな型があります。人によってこの型を嫌う人もあるとききます。

この能の原作者は観世十郎元雅。元雅の父世阿弥の自筆本もあるという。父子の作品の間にどんな関係があるのか知りません。シテ俊徳は天王寺で芸を見せ生業とし、妻や天王寺の僧も登場し、参拝客の賑わいをも見せる世話物の色もあるという。
現在の演出は江戸中期頃からだといいます。
世話物色を削り、悲惨な盲目の世界を能的に濾過し能的な美の世界を作り出しています。
元雅、世阿弥父子の原作を世阿弥的に改作した、たぶん能役者でしょうが、その人に興味が尽きないところです。

弱法師の話は、元雅以前に田楽の曲にあったといいます。当時流行った説教節や、大阪、柏原市高安村に伝わった説話が典拠だとも云うそうです。この説話では俊徳は継母に追い出され、天王寺で乞食をしており、訪ねて来た同郷の幼なじみの娘と夫婦になったとあるそうです。
これらを心の片隅に置いて見れば、一層味わい深い曲になるかも知れません。
 春の彼岸の中日、入り日は天王寺の西門の真上に沈みます。この西門は極楽浄土の入り口、東門に向かって造られていると云います。

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