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08.10
Sun
横佩の右大臣、藤原豊成は人の讒言を信じ我が子、中将姫を雲雀山の山中で殺すよう臣下に命じます。さすがに臣下は主君の姫を殺すに忍びず仮の小屋を建て匿います。
姫の乳母、侍従は季節の木々の花、草花を採り里に出て、行き来の人にこれを売って姫を養っています。
横佩の右大臣豊成は、供や勢子を引き連れ雲雀山に狩にやって来て麓で休息しています。乳母の侍従は客寄せに狂女を装い、花に纏わる歌をうたい、舞い狂い豊成の臣下に花を勧めます。豊成の臣下に花を買ってもらった乳母の侍従は臣下の勧めに雲雀山での来し方、中将姫の悲しい境遇を語り舞います。
右大臣豊成は狂女が乳母の侍従であることに気づきます。豊成は乳母、侍従が姫を雲雀山の谷陰に匿っているという噂を思い出し姫の所在を尋ねます。乳母は右大臣を信じません。右大臣の涙に乳母は草で造った小屋に右大臣を案内します。再会をはたした親子は八重桜の咲き誇る奈良の都に帰っていきます。

この能は中将姫の物語。中将姫は伝説上の人物とも言うようですが昔はかなり親しまれた人のようです。その一つが奈良、二上山の麓にある当麻寺。この寺の国宝、当麻曼荼羅は中将姫が蓮の茎の糸で一夜のうちに織ったといいます。この当麻寺伝説は能「当麻」につくられています。
 中将姫は竹の作り物の中に入って登場します。この粗末な小屋は哀れな中将姫の境遇を表します。中将姫は子方が勤めます。「げにや寒窓に煙り絶えて春の日いとど暮らし難う」と謡い、続いてシテと同吟で「貧しい身には親しい人も知り合いも遠ざかる」という意味の詩をうたいます。この詩は室町時代の小唄集、「閑吟集」に採られているといいよく知られた詩だったのでしょう。姫の、幼くも健気な姿がいとおしい。この姫を残してシテ侍従は花売りに小屋を出て行き前場を終わります。
 
豊成一行が登場します。アイが三人で犬と鷹を使い雉を狩ります。春の雲雀山の、今から始まるドラマの舞台を作ります。

シテ侍従は片袖を脱いだ狂女の姿で現れ、主君中将姫のために尽くすのだと述べ狂乱の舞「カケリ」を舞います。シテの狂乱は他の「狂い物」とは趣がかなり違います。狂乱の文言もありません。人の目を引くためと、野山の花を売る方便に思われます。
このシテには男のような気骨さえ感じられます。女手一つで姫を養わなければなりません。
豊成の従者に「この花を売ることは何か事情でもあるのか」と聞かれ「うるさい事を聞きますね。買わなければそれもご勝手です」と切り返します。

花を買って貰った豊成の従者に促され、来し方を謡うクセだけでなく、要所に古今和歌集などの詩歌をちりばめた詞章が、少々硬質ながら魅力です。クセの後に舞う「中の舞」は姫の行く末を思う舞でしょうか。他の狂女物には少なく「班女」など数例です。この曲は「中の舞」の後、「雲雀山にや待ち給うらん」と待ちわびる姫を思う心を急調に謡い留め、引き締めます。

雲雀山から救い出された中将姫は間もなく当麻寺に籠もり生涯仏につかえたといいます。
雲雀山は現在、和歌山県有田郡に雲雀山得生寺、奈良県宇陀郡に日張山青蓮寺があり今もご当地争いが続いているそうです。
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