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05.28
Sat
高貴な女性に愚弄された賎しい老人の怒りを作った能。
筑前の国、木の丸の行宮で御遊があり、庭掃きの老人が女御の姿を垣間見て恋に陥ります。これを聞いた女御は池の辺の桂の木に鼓を掛けさせて老人に打たせ、その音が聞こえたら再び姿を見せようと老人に伝えさせます。
桂の木に掛けた鼓を老人は心を込め、力をこめ懸命に打ちます。鼓は鳴りません。鼓は綾を張った鼓でした。鳴る筈がありません。
絶望した老人はそのまま池に身を投げます。
官人が女御に老人の入水を伝えます。女御は既に老人の呪がかかり狂気となっていました。
やがて池の中から恐ろしく凄まじい姿の老人の亡霊が浮かび上がります。
老人の亡霊は女御を引き立て、杖を振るい責め立てます。女御の泣き叫ぶ池の面に響き渡ります。地獄の様な修羅場を見せ「恨めしや、恨めしの女御や」と叫びつつ恋の淵に沈んでいきます。

対等な立場の女が、懸想する男の心を弄ぶというのであれば、
少しは許されるでしょうが、女は女御、男は庭掃き、身分の差は計り知れず、しかも老人という設定です。その悲劇性も計り知れません。突飛な題材ですが人の心の性を象徴的に描いた作品といえるでしょう。
老人は女御への恋心を「後の世の、近くなるをば驚かで、老いに添えたる恋慕の秋」と謡う。老人の恋心が切ない。
鳴らない鼓に、我が身の身分、死期の近い年齢を思い合わせ絶望する老人の最後が哀切に描かれます。
後場、恨みの鬼と現れた老人の姿が凄まじい。面は悪尉、白地に金入りの装束、恨みの権化の姿です。過激に動くことをせず、じっくりと力をこめた重量感のある動きに底知れぬ恐ろしさに襲われます。

女御は後宮の官位で皇后、中宮に次ぐ位だと言います。主に摂関家の娘が立ち、皇后に進む人もあったと云います。
この能の舞台、筑前国木の丸殿は三十七代齊明天皇の行宮で福岡県朝倉郡にあったと云い、齊明天皇が新羅征伐のために設けた仮の宮殿だったといいます。老人は田舎の老人ということになります。



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