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04.23
Sat
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色。盛者必滅の理をあらわす。奢れる人も久しからず、唯春の夜の夢の如し。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ」平家物語の冒頭です。
源氏と平家の権力争いの犠牲になった建礼門院徳子を平家物語、灌頂巻の豊かな詞章を巧みに取り入れ描いた作品。型はほとんどなく、わずかに清水を見込む型や、青葉がくれの遅桜を見上げる型に往時を偲び、今の身を思い万感を込める型があるのみです。人の聴覚から、壮大なドラマを呼び起こし感動を呼ぶ「聞き物」の大作です。劇がなくても人の心を動かす、能でも珍しい、見本のような作品です。灌頂巻は、平家琵琶の秘曲とも云われているといいます。豊かな詞章に琵琶歌の旋律が聞こえてくるようす。

長門国早鞆の浦で平家一門は滅亡、建礼門院も入水したが源氏の兵に救われ、大原の寂光院に我が子、安徳天皇、ほか一門の菩提を弔う生活を送っています。
義父である後白河法皇が建礼門院を訪ね、大原に行幸します。臣下は行幸の道を整備させます。当時大原は辺鄙な山奥だったのです。山奥の女院の生活が偲ばれます。
女院の庵室では女院と侍女の阿波内侍、大納言局が身を寄せ合って暮らしています。
後見が運び込んだ作り物の藁屋の引幕が除かれ身を寄せ合った三人が姿を現します。美しい姿です。頭を包む白い布は、出家を表す花帽子です。羽二重で空気を通し難く面をかけているので演者には苦労です。
「山里はものの寂しき事こそあれ、世の憂きよりはなかなかに、住みよかりける柴の枢」女院が述懐します。「折々に、心なけれど訪うものは。賤が爪木の斧の音」地謡が受け、人目の煩わしさと、静かな佇まいを謡います。いずれも灌頂巻の一節です。
 女院は局を伴い後ろの山に樒を摘みに出かけます。「檀特山の嶮しき道を凌ぎ菜摘み水汲み薪」と女院「とりどり様々に難行し仙人に仕えさせ給いて終に成道なるとかや」と地謡。険阻な山に釈迦の難行苦行に思いを馳せます。
 法皇行幸一行が寂光院に到着します。居残った内侍が法皇の応対をします。
法皇も花帽子姿です。法皇の役は気品が求められ、主立つ人が勤めるのが習わしです。
法皇一行は荒れ果てた寂光院の佇まいに驚きます。
「一宇の御堂あり。甍破れては霧不断の香を焚き、とぼそ落ちては月もまた常住の灯をかかぐとは、かかる所か物凄や」廃屋同然の女院の住まい寂光院の佇まいです。昔から今に至るまで人々に膾炙されて来た、灌頂巻の物凄い寂光院の描写です。
 やがて裏山の岨伝いに女院と局の姿が見えます。女院は花籠を、局は薪に蕨を折り添えて持っています。「昨日も過ぎ今日も空しく暮れなんとす。明日をも知らぬこの身ながら、ただ前帝の御面影、忘るる隙は世もあらじ」美しい情景です。
「一念の窓の前、、、、、聖衆の来迎を待ちつるに、思はざりける今日の暮れ」思いも寄らぬ法皇の行幸に女院は涙し「さてや御幸の折しもはいかなる時節なるらん」行幸の途次の有様をたずねます。地謡が行幸の途次の美しい景色を謡います。いずれも平家物語灌頂巻の一節です。
女院は地獄の有様を見たと云うがと法皇が尋ねます。女院は西海の海に昼夜漂う阿鼻叫喚の苦しみ、陸の戦いの有様を地獄にたとえて語り、名だたる平家の武将の最後、我が子、安徳天皇の入水を語ります。「今ぞ知る、御裳濯川の流れには波の底にも都ありとはと」幼い安徳天皇の辞世が涙を誘います。

臣下が法皇に還幸を勧めます。「女院は柴の戸に暫しが程は見送らせ給いて」柴の戸の前に立ちつくし、見送る姿が印象的です。平家物語絵巻の、同じ場面の、未だ少女の面影を残す青白い顔が思い浮かびます。

建礼門院徳子(1153~1213)は平清盛の次女。17歳で後白河院の養女となり入内、高倉天皇11歳、徳子17歳。5年後23歳で安徳天皇を出産、清盛を安堵させました。当時では高齢出産でした。高倉天皇と徳子の結婚は政略結婚の最たるものでした。
平家が壇ノ浦の合戦で敗れ、安徳天皇入水、徳子も入水したが源氏方に救われ大原の寂光院に入り、安徳天皇と一族の菩提を弔い、生涯を送りました。
高倉天皇は色白で容姿端麗、人柄もよく人々に慕われたといいます。超美人だったという小督局とのラブロマンスは能「小督」作られています。
小督は徳子の父、清盛に迫害されましたが、高倉天皇に小督を肝煎りしたのは徳子した。高倉天皇が寵姫を失い沈み込んでいたのを慰めるためでした。
後白河法皇は譲位後30数年院政を行って朝廷の権力奪回に意を砕きました。
源平の権力争いを仕組んだとも云われ源頼朝に大天狗と云われた程の権謀術数の人だったといいます。

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